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街場の中国論

増補版 街場の中国論 内田樹著
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 積んで置いた本をようやく読み始めています。

 内田氏は「日中の世界像の<ずれ>を中心的な論件にした中国論が読みたい」が、見当たらないので大学院の演習で話し、それを材料に自分が読んでおもしろい本にしたそうです。
 演習では中国の専門家がいないが、基本的な歴史を踏まえ、街場の人々が知っていそうなことから、中国はどうしてこのように行動し、これからどうしようというのかを推論していったそうです。
 インサイダー情報でなくとも他国の国際戦略や国民性について、あまり大きな間違いをしないで(間違えても修正できる)考察する方法とはどういうものかを知りたい若い読者には、有用な本だろうとのことです。



<さんじのぱぱが強く感じたこと>

 さんじのぱぱは、注目したところの本の余白に赤ボールペンでメモしていますが、4、5ページに1回はメモするおもしろさでした。
 おもしろいというのは、「興味深い」「へーっ知らなかった」「推理・論理の展開がなるほど」です。

1)三千年の歴史がある中華思想と王化政策(国境線を定めず曖昧にしておく事を含め)
  中国の人々の意識のどこかにあって、わかりにくい中国の行動のいくつかは、この意識を前提に読み解けるのかもしれないということです。
 中華思想が成り立つには、周辺の民より中華が文化的に優れてい(あるいは優れていると意識でき)なければなりません。
 中華思想の意識については、別の本「中国は、いま」(岩波新書)では、アジア人で初めて博覧会国際事務局議長になった呉建民氏が、中国人の潜在意識には「親分になる」という思想があると指摘し、中華思想の伝統がいまなお色濃いという。

2)中国の専門家がどう感じようが、専門家でない街場の人々にとっては、歴史を大づかみにとらえ、こういう背景や理由からこのような展開になったのだろうと、ああだ・こうだ(紙上で)推論してゆくのが、非常に楽しく感じた。できれば中国の専門家がこの推論についてコメントするような本が出てくると、なお楽しいのだが。専門家は専門外の人は相手にしないのかもしれない。

3)周恩来の「王道政治」
  王道:人徳に基づく統治
  覇道:武力・権謀による支配
 社会党書記長だった浅沼稲次郎が中国を訪れたとき「アメリカ帝国主義は日中人民の共同の敵」と発言。
 その後、1972年の日中共同声明にて、周恩来は「日本軍国主義は日中人民の共同の敵」という一語変えたフレーズで、巧妙なロジックを展開し、日本の過去の軍国主義を批判できるようにしながら、現在・将来の日本人民に影響を与えず、未来志向のパートナーシップの確立を提唱した。また、このロジックにより日本に対する賠償請求を放棄したことはまさに「王道政治」だという。
 このあたり、身内の中国人民から突き上げられないように過去の日本帝国主義を批判しながら「王道」を見せ、またこれからの日本とはパートナーとして対応するという丸く収める巧妙さが凄い、とさんじのぱぱは感じました。

4)台湾の対日感情
 日本は韓国・台湾とも植民地支配していましたが、台湾の方が比較的対日感情が良いのはなぜか。
 この本では、台湾に赴任した行政官の質が高かったことを理由の一つにして良いのではないかと書いています。
 児玉源太郎・後藤新平・新渡戸稲造。
 これだけでは理由として弱いので、もっと何かあるのではないかと、さんじのぱぱは池上彰著「そうだったのか! 現代史」を見てみました。
 すると、太平洋戦争で負けた日本が台湾から去った後、台湾を返還された大陸の中華民国の軍隊が代わりにやってきた。それがまともな軍隊でなく読み書きもできない者が多い。また日本が残したインフラ・財産を取り上げ公私の区別がつかずに私物化していった。また、大陸では共産党との内戦のために台湾から物資・戦費を調達し住民に不満が溜まった。さらに二・二八事件の住民暴動を大陸の国民党の軍隊に応援を求めて住民虐殺の鎮圧をしたため、国民党の外省人・軍隊より、日本の植民地支配の方が相対的にまだましだったという印象が残ったという言い方ができるかもしれないと書いてありました。
 ここで、そうかもしれないと少し納得しました。
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テーマ : 読書メモ
ジャンル : 本・雑誌

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