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反論の技術-その意義と訓練方法

反論の技術-その意義と訓練方法 香西秀信著 (オピニオン叢書20)
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当たり前ですが、たてついたり、はむかったりするための本ではありません。

 「論理トレーニング」で著者の野矢茂樹氏が、良書である。情熱があり、理論があり、そして実質的な具体例が豊富にあると、紹介していたため、買いました。
「論理トレーニング」は初版が1997年です。
さんじのぱぱは、十数年前に大手町に紀伊國屋書店ができたときに、平積みになっていたこのタイトルを見て、論理的に考え文章を書けるようになりたいと考えて買ったのです。
論理的な文章は美しい。
『はじめに』の冒頭のパラグラフを引用してみますが、この部分を読んだだけでも読みやすいからわかりやすく美しささえ感じてしまうので、”論理的”に憧れてしまいます。

 「論理」とは、言葉が相互にもっている関連性にほかならない。個々の主張が単発に終わること無く、他の主張と関連し合っていく。それゆえにこそ、一貫性を問われたり、ある主張を根拠づけたり、また他の主張に反論したりすることが可能になる。そうして、言葉は互いに関連づけられ、より大きなまとまりを成し、ばらばらの断片から有機的な全体へと生命を与えられるのである。それゆえ、「論理的になる」とは、この関連性に敏感になり、言葉を大きなまとまりで見通す力を身につけることにほかならない。



さて、本題の「反論の技術-その意義と訓練方法」です。
本書は、教師が生徒に議論を教える流れで書かれていますが、
サラリーマンのさんじのぱぱも、大変興味深く読めました。

 例えば、18ページには「意見を述べるとは、反論すること」とあります。
もし、その場の全員が自分の意見に賛成で認識が一致しているならば、
わざわざ、自分が前提としている認識に基づき、意見を主張する必要はありません。
 その場の雰囲気が自分の感覚と何かしら違い(違和感があり)、
自分の考えることの方が妥当だと思うから、意見を主張する気になるのです。
 その意見は、その場の雰囲気や共通認識に対する反論になります。
それゆえ、意見するときには、反論して良い状況であるかを確認してから
心して主張しなければなりません。

 しばしば、「オレに意見するのか!」という場面がありますが、
意見を述べることが反論になるので、そのように恫喝されてしまうのでしょう。


本の構成は、
 I章は、「反論」の意味、意義
 II章が、「反論」の自修方法の紹介
 III章は、教師の立場で、教室で生徒に反論を訓練する具体例の紹介
です。
反論対象の論文と、生徒の反論例や、著者の反論例がたくさん掲載されているので、
反論を実感できます。

ある意見・論文を見聞きしているときに、
論理的におかしいと気づく鋭い感覚を養い、
反論する部分を明確にして(スコープを定めて)
隙の無い意見(すなわち反論)を構築する力を身につけられれば、
弁証法で言うところの「正」×「反」→「合」のように、
「正」に対して「反」を示し、
止揚アウフヘーベンで、「合」を得て、
その「合」が、今度はよりよい「正」の考え方になる。
すなわち、よりしっかりとした考え方や意見に洗練される。
その新たな「正」は、次に現れるまっとうな「反」によって、
さらに力強い「合」となり、次の[正」として有効な意見になる。

つまり、正しく「反論」できなければ、発展・進歩しない。


「あとがき」から
 本書で反論の技術を身につけたとしても、
 現実の議論は必ず「場外乱闘」になるので、場慣れが必要。
 十分な反論能力のある若手が、知力・能力で劣る年長者に、手も無く捻られてしまう。
 年長者には「管理者のレトリック」があるからだ。
 だから議論に強くなるとは、(場外乱闘の術も身につけるので)
 実際には嫌なことなのだと、著者は締めくくっている。

「管理者のレトリック」 
  ①先送り
   相手の提案議論を誉め、
   「よりすぐれたものにブラッシュアップしよう、拙速は台無しになるから」と言い、
   計画の実行を先送りして、あわよくば闇に葬ろうとする。
  ②骨抜き
   明日にでも実行できるような提案議論なのに、
   大げさにプロジェクトチームを作らせ、
   「船頭多くして船山に上る」のごとく収集つかなくさせて骨抜きにする。

  
  →さんじのぱぱは国会議員を思い出します。
 
   
あとは、読書メモ。                  
■読書メモ

・反論の2つの型
  主張型・・・相手の主張を否定するのではなく、別の根拠で対立する主張をする。
        他の参加者の主張とは無関係に自分の主張の方が良いと競う様子は、まるで「競技」のよう。
        主張の並立で終わってしまう可能性有り。

  論証型・・・相手の主張の根拠を切り崩す。
        相手の論証を否定するが、相手の主張そのものを否定することはしない。

・反論の”亜種”
  当意即妙の反論。エスプリ(l'espri)の鍛錬。

・意見は基本的に対立する。
  全員が自分の意見に賛成なら、わざわざ主張して論証しない。

・議論は意見が対立する事柄に対してのみ可能となる。

・意見の表明は、別の人に対する反対の主張である。
  「私は○○さんの意見に賛成だ」と、ある人の意見に賛成する場合は、
  その意見に反対の主張をしている人への反論を意味している。

・学問の業績とは、古い業績に対する批判である。

・議論においては、「現状」(status quo)は、それに反対する十分な理由が提示されるまでは、有効である。
 立証責任はそれに異議を唱える側にある。

・なぜ、討論の指導が重要なのか。
  異なる意見の対立によって問題を深めていくことが、思考の働きそのもの。
  我々が物事を考えるときには、頭の中に対立を作りだし反論・否定により思考を発展させる。
  もはや反論の出なくなったときが思考の終わるとき。

・守りの論理・・・自分の主張の理由付け。→教室で指導されている。
 攻めの論理・・・論破。        →されていない。

・論理的とは、批判に対し隙が無い(防衛力がある)こと。
  反論に耐えうることが確認されて初めて、その正しさが暫定的に承認される。

・主張を、「言語」によって表現することは、時間軸に沿って情報を順に提示することになる。
  →同じ情報でも、提示順序により聞き手に与える印象が異なることがある。
    A子は、美人だが性格が悪い。
    A子は、性格が悪いが美人だ。

・「反論は真理を保障する」
   ある主張が正しいからそれに反論できないのでは無く、
   反論できないから、正しいのである。

・我々が扱う議論の領域は、自然科学のように減道で客観的な方法で「真偽」が原理場確定できる領域では無い。
 従い、説得力のある主張を暫定的な「真理」とみなす。
 →ヴィーコ(Giambattista Vico)は、デカルトが数学の方法をあらゆる学問領域に持ち込もうとすることを批判し、議論の方法であるレトリックの重要性を説いた。数学における真理に対し、法廷における真理を考えた。

・反論の訓練を重視し、議論の指導を反論の訓練から始めよと主張する理由は、
 ①②の例のように、より説得力のある論に練り直せるため。

 ①ジャン・ギットン
  ある議論の強さは、議論自身の性質のほか、反論の困難さでも示される。
  これを承知ならば、反論を待たずに、
    自分の中に論敵を住まわせ、
    論敵に抗弁の自由を与えるのだ。

  矛盾を通過した思考→試練を経た思考→反対者の打撃に耐えうる思考
  →論敵の根拠を取り入れ、論敵の立場を尊重した思考。

 ②ジョン・スチュワート・ミル
  一切の反論に傾聴し、反対論の中の正当な部分によって自らを利益する。

・自らの議論を強靱にするための2つの方法
 1)構想段階
   自分で自分の議論に反論してみる。
   反論できるくらいなら初めから主張しないので、意識して実行することは難しい。
   →議論の脆弱な部分に疑問を感じ反論を構築することを、無意識にする必要がある。
 2)文章記述中に意図的に反対意見をとりあげる
   →反対意見取り上げる効果
    ①慎重で公正な議論をしている印象を与える。
    ②とりあげた反論を論破することにより、こちらの議論の優越性を強調できる

・反論のとりあげ方の2種
 1)実在する対立意見をとりあげる
   反論を取り上げざるを得ない状況がある
    -主張が独りよがりに思われてしまう場合は対立意見を採り上げざるを得ない
    -都合が悪いから対立意見を隠しているのではないかと勘ぐられる場合
   ・3つの注意点
    ①反対意見が多いという先入観を与えないようにすること
    ②本来ならば黙殺できるような反対意見に熱心に反論すると、
     反対意見が実際以上に重要なものに思われてしまう
    ③読み手が、取り上げた反対意見の方を気に入ってしまわないようにすること
 2)予想される対立意見を先回りしてとりあげる
   対立意見に先手を打って反論しておけば、後で対立意見を実際に見聞きしても新鮮みに欠け、力を失わせる効果を狙える。・・・免疫効果:口頭での議論に、より有効。
   ・2つの注意点
    ①反論を多用すると問題だらけの立論と思われる・・・1)の①に相当
    ②「雉も鳴かずば撃たれまい」
     本来気づかれなかった欠点を気づかせてしまい墓穴を掘る

・トポス:議論の型。本来「場所」を意味するがレトリック用語では「説得力のある議論を探し出す場所」。
     議論する際の発想はいくつかの類型が繰り返し使われることに古代の弁論家が気づいた。

・トピカ:トポスについての学問・研究のこと

・トポスの種類
 ①定義からの議論
   論者の価値観や思想に基づく定義から議論する。
   →説得力は読み手が定義に納得するか否か次第。
 ②類似のトポス
  ・比喩
    判断の論理関係が似かよっていることを利用する。
     判断A(aならa'である)が成り立てば、
     それと論理関係が似ている判断B(bならb'である)を認めよ!
  ・正義原則の利用
    互いに大変似ている二つの状況に対し、対応の仕方を変えることは不公正。
    同じ本質的範疇に属するものは、同じ待遇を受けるべきである。(ペレルマンの説明)
 ③比較のトポス
  漢文訓読でいうところの「~、~況んや---をや」の論法。
  「もしAがaならば、それをaであると判断した要素をより多く持っているBもまたaでなければならない」
    
・トポイカタログ
 日頃の読書等でおもしろいと思った反論を、1冊のノートに書き写して集める。
 (トポイはトピカの複数形)
 見よう見まねが反論の訓練になる。

・「独創とは、人に知られぬ剽窃(盗用)である」(イング William Ralph Inge)

・議論の相手を「説得」しようとなどはしない。
 相手はただ「論破」するのみである。
 「説得」すべきは第三者の聴衆である。

・反論する箇所を引用する理由
  ①相手の発言の言い換えを防ぎ恒星に反論するため
  ②相手の具体的な議論から遊離するのを防ぐため
  ③反論の範囲を定め、引用していない部分に反論しないようにするため。

・反論を箇条書きする理由
  「第一に~。第二に~。第三に~。」
  ①文章の見栄え
  ②反論者に反論の自覚が生まれる
  ③読者がビジュアルに理解できる。

・相手の大前提を撃つ
  相手の発言の背後のある、発言を生み出した価値判断(大前提)に
  確実に批判の矢を向けなければ、反論にならない。

  しかし、大前提はしばしば隠されている。
  
  というのは、三段論法の基本形で、最初の大前提は省略されることが多いため。
   AならばBである。(大前提)→論者の価値判断
   CならばAである。(小前提)
   ゆえに、CはBである。(結論)
以上
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・そもそも、あたりまえのこと
 を考えながら書いてゆきます。

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